Dx

企業がDX人材を育成する方法

DXの取り組み状況と現状・課題(DX人材の不足)

AIやIoTといった言葉が飛び交い、インターネットを介したサービスが拡大している一方、DX化に取り組もうとする企業を苦しめているのが「デジタル人材の枯渇」という実態ではないでしょうか。実際、デジタル化への取り組みが進んでいる企業ほどDX人材を確保できているというデータ( 「デジタル化に取り組んでおり、成果が出ている」企業では、「特定の技術を持つIT人材」を「確保できている」割合が16.7%、 「企画力やビジネスの知見を持つ人材」を「確保できている」割合が7.8%と突出して高くなっている。)が独立行政法人情報処理推進機構(IPA)社会基盤センターのIT人材白書2019によっても提示されています。ここからもデジタル化におけるDX人材の重要性が感じられるでしょう。

一方で、IT企業によるIT人材の量に対する不足感は、2016年は75.5%でしたが、2年後の2018年は92%にも及んでいます。そして経済産業省委託事業の調査によると、今後2030年までのIT人材の不足はもっとも悪いシナリオで79万人、中間のシナリオでも45万人となると予測されており、このような実態は各社のDX人材の争奪戦を加速させていくでしょう。

また、IT人材育成については、IT人材が確保されている企業でも「IT人材育成は必要だが特に行っていない」と回答する企業の割合が31.3%と最も高くなっています。つまり、育成を実行に移せるかどうかが、DX推進における成否の明暗を分けるとも考えられます。

ここで注目すべき調査が、IPAが4月22日に公開した「デジタル時代のスキル変革等に関する調査」です。この調査によるとIT企業の事業部門やユーザー企業の情報システム部門、IT活用を推進する部門に所属するIT人材のうち、DX人材でないIT人材の41.8%が「転換志向」を持っているといいます。

ここでいう転換志向とは、新しいスキルを身につけてDX人材の転職を希望している人材であり、この40%以上を占める転換志向のIT人材をDX人材に転換させることが出来れば、DX人材不足の緩和に大きく影響を及ぼすと考えられます。

一方で転換思考を持つIT人材の35.2%は「情報取得や学習を行っていない」と回答している現状があります。そこで浮かび上がってくるものが彼らの学習の後押しをすることの重要性であり、企業がきっかけや支援を与えること、つまり社内育成の必要性なのです。

(参考)

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC138YT0T10C21A5000000/?unlock=1

https://www.ipa.go.jp/files/000073566.pdf

 

「DX人材」に求められる要素

そもそもDXとは「デジタル技術を活用して生み出された商品・サービスによって顧客の支払意思額を向上させるための取り組み」などと定義されており、これに伴い電通デジタルではDX人材を「テクノロジーを起点に、デジタル時代の企業のあり方を提言し、その変革実行にともなう課題解決に必要な、高く幅広い専門性を持つ人材」と定義しています。

この定義をもとにすると、デジタル技術を活用できる「デジタル知見」は必要不可欠であることは明らかです。しかしそれはDX推進に対する必要条件にすぎません。

DX推進は単なるIT技術の導入やIT化を示すのではなく、「顧客の支払意思額の向上」を目的とするため、「デジタル知見」だけでなく、「ビジネス知見」も有していることが必要十分条件なのです。

それでは具体的にどのような要素が必要となってくるのかを考えていきましょう。

三菱総合研究所によると、必要なスキルを大別すると以下の3つになります。

1つ目は技術系スキルであるデータサイエンス・エンジニアリングです。

データサイエンス・エンジニアリングは、AI/機械学習やクラウドに関してなどデータサイエンスやITを活用してモデルの開発やアプリケーションの実装を行うスキルを指していて、実装や技術動向把握、データ理解などが求められます。

2つ目はビジネス系スキルであるビジネス・サービス設計です。ビジネス・サービス設計としてはUA/UXやデザインシンキングなどユーザーに対する理解に基づくデザインのスキルやサービス開発の知見、ビジネスモデルの設計などのスキルが求められます。

3つ目は組織・プロジェクト管理です。こちらもビジネス・サービス設計と同様でビジネス系スキルであり、組織マネジメントなど組織を形成・運営するためのスキルやプロジェクトマネジメントに関するスキルです。これらを用いて人選や組織づくり、方針策定などをしていくことが求められます。

ここまではスキル面に焦点を当ててお話をしていましたが、スキル面に加えて意識すべきなのがマインドに関してです。DXのゴールともいえる「変革」「イノベーション」の実現には「現状に満足せず変えようとし続ける」ことや「新たなことに挑戦する姿勢」、また日々物凄いスピードで移り変わる新技術に対しての「好奇心」や「学び続ける姿勢」などを持っていなければDX人材になることは難しいでしょう。

(参考)

https://www.ipa.go.jp/files/000073017.pdf

https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20200729.html

https://vws-biz.com/column/what-are-the-dx-human-resources-that-will-be-emphasized-in-the-future-method-and-training-points/

https://techro.co.jp/category/blog/dx/

DX人材の育成におけるカギ

それではこのようなDX人材を育成する際に抑えるポイントは何かを考えていきましょう。

まず最初に押さえるべき流れとしては以下の3ステップです。

ステップ1.経営陣がDXを理解し、経営戦略に取り込む

ステップ2.全社でDXを理解する

ステップ3.DXの推進者をつくる

ここでカギとなるのはステップ2で出ている「全社で理解」出来ている状態を作り出すことです。DXに取り組み続けていくためには社員自ら学び、学習する状態を作り出すことが必要不可欠であり、その為には社員全員が自社の方向性やDXについて理解をしていく必要があるのです。

これらのことを踏まえてDX人材の育成の取り組み事例と共に考えていきましょう。

(参考)

アフターコロナ・ウィズコロナ時代の「人に頼らない」変革

DX成功のカギはデジタル人材の育成 第4回:DX人材の育成方針と方法

中小企業のDX推進は人材不足で難しい?課題解決方法とは?

DX時代に求められるデジタル人材とその採用・育成のポイント

カインズ DX人材育成に必要な環境作り

ホームセンター業界1位となったカインズは2019年7月、ITエンジニア、ウェブデザイナー、コンテンツクリエイター、デジタルマーケティング人材など100人以上の人員を抱える組織を作りました。カインズがDX推進のためのチーム作りに向けて真っ先に取り組んだのがデジタル戦略の策定です。これは全社でDXを進めるうえで重要となる「全社理解」を促すポイントです。社内に対し、自社がどこに向かおうとしているのかや、何を目的に動こうとしているのかについて、明確なメッセージとして届けることが出来なければ、社員が主体的に動く環境づくりは難しいのです。そこで、カインズは中期経営計画でデジタル戦略を柱に据え、自社の方向性を明らかにしています。自社の方向性の明確化はDX人材の獲得の際にも効果的です。戦略の方針が定まることで、どのような組織を作る必要があり、その実現にはどのような人材を獲得・育成することは必要なのかが必然的にわかるのです。

また、カインズは組織の構造改革を進める上でデジタル用語を多用しないことを大切にしています。デジタル用語を多用化することで、これまでデジタル施策に携わってこなかった社員にとって、自社のDXを理解しにくい環境を作り出してしまい、同じ方向に進めないリスクが高まってしまうからです。

つまり、カインズはDX人材育成に当たる事前準備として、「組織として同じ共通認識と目的意識を持てている環境づくり」という組織をつくるうえで重要なポイントを意識した環境づくりを行っていたのです。

ヤマト運輸「DX人材」1000人育成

ヤマトホールディングスは2020年1月、ヤマトグループにおける中長期経営の全体構想として「YAMATO NEXT 100」を策定しました。これは宅急便システムのデジタル化やECエコシステムの確立の強化などを目的としており、この実現に際し力を入れているのが2021年度に設立された、全社員がDX人材となるための学校「Yamato Digital Academy」です。

ここでは、ビジネス領域と基礎的な技術というビジネスの側面とIT技術の側面の双方を理解した人材をつくる為のカリキュラムが構成されており、データ分析やDXの基礎などについて3年間で約1000人を受講させる計画です。具体的には、経営層向けカリキュラム、DX育成カリキュラム(デジタル機能本部内向け)、全社員向けカリキュラムなど多様なカリキュラムが作られており、この中には理念研修や全社オペレーション研修などを通じて他部門が手がける事業を理解する機会もあります。ヤマトホールディングスは会社全体としての共通認識・目標を意識することで全社としてのDX人材の育成に取り組んでいるのです。

ここでポイントとなるのが自分たちがどう変わるべきなのかを個々と組織で考えて実践する土台作りにヤマトホールディングスは取り組んでいることです。基本素養としてのDX知識と価値観が社員に浸透させることで、知識のギャップで話が進まない、理解が得られないというリスクが削減され、DX人材育成の際の大きなポイントとなる「全社理解」が実現された環境づくりが出来るようになるのです。

(参考)

https://digital-shift.jp/dx_strategy/210222

https://newspicks.com/news/5171776/body/

https://www.baycurrent.co.jp/our-insights/pdf/HR%20strategy%20in%20the%20digital%20age.pdf

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2679E0W1A520C2000000/?unlock=1

https://japan.zdnet.com/article/35176713/2/

https://dx-navigator.com/dxtrend/yamato-hd-open-dx-academy

DX人材育成に伴う目的と方向性の明確化

ご紹介した2つの事例から浮かびあがるように、全社として会社の将来的に向かうべき方向性を理解することがDX人材の育成に当たる環境づくりとして非常に重要になってきます。

この環境づくりをもとに、自社のDX人材の育成プログラムを構築する必要があるのですが、注意すべき点としては自社が求める「DX人材」とはどのような人材かが明確になっているかということです。

DX人材にはビジネス面・技術面など幅広いスキルが求められ、人物像も多様化している為、漠然としたDX人材という定義だけでは自社の方向性に合わない、ゴールの見えないDX人材の育成となる可能性が高くなります。そのため、まずは自社がめざしたいDXは何を目的としているのかを明確にし、実現に必要な役割を洗い出し、その役割に適切な要素を育成するターゲットを的確に定めることが必要となるのです。

 

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