近年、新規事業や新しい商品・サービスの開発に取り組む前に、POCの実施が推進されています。
POCとは何を意味する言葉で、どんなメリットがあるのでしょうか。今回の記事では、なぜPOCが必要とされているかや、POCの成功事例をご紹介します。
POCとは
POCとはProof of Conceptの略で、新たなアイデアやコンセプトに対し実現可能か、そして目的としている効果が得られるのかについて、実験的に検証する工程のことを言います。
よく実証実験と混同されますが、実証実験が現段階での問題点の検証を目的とするのに対し、POCは実現可能性の検証のために実施するという明確な違いがあります。
POCをなぜ行うのか
そもそも、なぜPOCを実施する必要があるのでしょうか。ここではPOCを行うメリットについて、ご紹介します。
リスクを最小限に抑えるため
一つ目の理由として、POCの実施によって開発のリスクを抑えられるというメリットが挙げられます。
POCは小規模で試験的なものですが、これによって安定性や使用感を検証できるだけでなく、技術面など多角的な視点から実現可能性を計ることができます。そのため、開発期間中に発生しうるリスクを未然に防ぐことにも繋がります。
コストを削減するため
二つ目に、コストや開発工数の削減が挙げられます。
例えばPOCを行わずに開発を進めていき、途中で実現性の低さに気付いた場合、それまで費やしてきた費用や工数は無駄になってしまいます。
しかしPOCを行うことで、実現可能性を早い段階で判断し、上手くいくだろうという思い込みだけで開発を進めることがなくなります。そのため、結果的にコストや工数の削減にも繋がります。
投資などの重要な判断材料となる
三つ目に、投資家等の重要な判断材料になるという点です。開発プロジェクトには技術開発者だけでなく、それを支える投資家も必要となります。
しかし、多くの投資家は、将来性や実現可能性の見えないものにはお金をかけたいとは思いません。そのため、POCの結果は投資家のような開発プロジェクトに関わる人々にとって、有力な判断材料となります。
POC成功のポイント
続いて、POCを成功させるポイントについて解説します。
スモールスタート
POCを成功させるポイントの一つが、スモールスタートを心がけることです。
例えば、いきなり大規模にPOCを実施しようとしても、それなりの資金が必要となるだけでなく、プロジェクトが長期間になるため日程調整も難しくなります。
本来は実現可能性を計り、今後のリスク回避やコスト・工数の削減を目的・メリットとして行うPOCですが、この実験自体が目的化してしまうという本末転倒の事態にもなり得ます。
まずは小規模でプロジェクトを実施し、できる限り現場の声を確認しながら、導入後の環境と同じ条件下でPOCを実施しましょう。
ユーザーの目線に立つ
二つ目に、ユーザー目線に立つということです。
POCに限らず、新しい商品やサービスの開発にユーザーの視点は非常に重要です。
なぜなら、ユーザーにとってメリットのあるものを開発しなければ、会社の利益にはつながらないからです。
つまり、技術的に優れたものであっても、ユーザーが利用したいと思えるものでないといけません。
POCの際もユーザーの目線に立ち、ニーズがあるか検証しましょう。
導入による効果を明確化する
三つ目は、検証したシステムを導入した際に得られる効果をしっかりと明確化することです。
新技術導入による効果を明確化した上で伝えることにより、企業からの投資を得やすくなります。
また、新しい技術を導入することで、どんなビジネスに結びつくのか、事前に検討することも大切です。ただPOCを実施するだけでなく、実施後の展開も見据えて行いましょう。
POC成功事例
最後に、AIを活用したPOCの成功事例についていくつかご紹介します。
混雑状況の見える化
一つ目にご紹介するのは、株式会社セキュアと株式会社ヘッドウォータースがPOCを行なった、フードコートの混雑状況をリアルタイムに見える化するソリューションです。
こちらは来店顧客のプライバシーを考慮するため、フードコートへのAIカメラの導入が行われました。フードコートの映像をカメラが取得します。そして画像解析により顧客を検出し、位置情報のみをクラウドに送信することで、顧客情報がアイコンに置き換えられ、誰でも閲覧可能なWEBページに送信される仕組みとなっています。
POCを通して、誰でも各エリアの混雑状況を遠隔から確認できるだけでなく、外国の方にも視覚的に混雑状況をお知らせできるという点で、多くの顧客のストレス緩和につながることが分かりました。
(参考)「Headwaters_最近のTopics_Comieru live」
AIによる溶接検査
二つ目にご紹介するのは、東芝デジタル&コンサルティング株式会社とスペインのGestamp社とGestamp社のドイツ工場で、AIやIoTによるシャシー部品の溶接検査に関するPOCを行なった事例です。
今回のプロジェクトでは、今まで大規模ビルなどの損傷検知等で活用されていたAEセンサーを、工場の製造工程に導入し、従来よりも高精度な溶接検査を可能となりました。
また、今回のPOCによってAEセンサー活用の幅が広がり、Gestamp社をはじめ多くの企業と提携することが実現しました。
参考:
まとめ
今回の記事では、POCとは何か、そしてPOC実施のメリットから成功事例までご紹介しました。
POCは新サービスやアイデアの実現可能性を計るだけなく、投資家やプロジェクトに参入予定の企業から支持を得るためなど、様々な場面で利用されるようになりました。
しかしその反面、POCが注目されることでPOC自体が目的化してしまい、POCというステップが必要でないもの、もしくは、POC以外の方法で検証すべきものでも、安易にPOCが利用されるケースがあります。
まずはプロジェクトのゴールをしっかりと設定し、そこに向かうためにPOCが必要であると判断した場合に、スモールスタートでPOCを活用していきましょう。
【監修者】編集長
プライムDXブログ編集部の編集長。現在はプライムスタイル株式会社新規事業、マーケティング担当も兼務。皆様にとって役立つ情報提供を心掛けて参りたいと思います。