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DXプロジェクトで気を付けるべきこと【DXとプロジェクトマネジメント】

経済産業省が公表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」にもあるように、日本の多くの企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要に迫られており、DX推進に積極的な姿勢を見せている企業も増えています。しかし、従来の基幹系システム開発のプロジェクトとDXプロジェクトでは異なる点もあり、プロジェクト進行の際にはDXプロジェクトならではのポイントを押さえる必要があります。本記事では、DX案件のプロジェクトマネジメントで気をつけるべき点やプロジェクトマネージャーに求められることについて解説します。

従来の基幹系開発のプロジェクトとDXのプロジェクトの3つの違い

従来の基幹系開発のプロジェクトとDXのプロジェクトの一つ目の違いは、設定するゴールです。前者では事務作業のように人が行っていた業務を自動化し、人がおこなう業務量を削減することが目的ですが、後者はそこから得られたデータを基に顧客体験の提供や新たなビジネスモデルの構築を行うことを最終的なゴールに据える場合が多くなります。

DXプロジェクトの場合はシステムが活用された後、顧客の反応を見るまでは何が正解なのかはわからないというケースが少なくないのです。それゆえ、明確に要件定義されていない状態からプロジェクトがスタートする場合が出てきます。このような場合、プロジェクトのリーダーであるプロジェクトマネージャーには「ユーザーの要求を整理し、共に要件を決めていく」姿勢が求められます。

したがって、ユーザーのビジネスに対する深い理解とAIなその技術の両面に関する知識を持っていることが求められます。

二つ目の点としては、関わる部門が多岐に渡るという違いです。DXプロジェクトは新しいサービスやビジネスを生み出すことが目的なので、関係部署が1つにとどまらずユーザー企業内において複数部署の連携が必要になることが少なくありません。

複数部署間の連携を取ることに手間取らないために、部署を横断したプロジェクトチームを作ることや役員や社長に意思決定に加わってもらうなど、プロジェクトを円滑に進める工夫が必要になります。

三つ目の相違点としては、ソリューションの特性上、スケジュールが流動的になりかねないということが挙げられます。

多くのDXプロジェクトでAIがソリューションの選択肢として挙がりますが、AIがしっステムとして成果を出すためにかかる時間は読めないケースが多くあります。

例えば、教師データありの機械学習システムの開発では、一般に①必要なパラメーターの仮説定義②データの収集・加工③モデル構築④評価となりますが、必要な教師データがなかなか提供してもらえずに想定外の時間がかかることや、正答率が高まらずパラメーターの定義からやり直すということもあります。このようにAIを用いたシステムの開発では、期待した成果が出るまでに開発サイクルを何度も繰り返すこともあります。そのため、事前に組んだスケジュール通りにプロジェクトが進まない可能性が高くなります。

以上のように、DXプロジェクトは従来のシステム開発のプロジェクトと異なる点が出てきます。プロジェクトマネージャーはこれらの点を踏まえてプロジェクト管理に当たる必要があります。

(参考)https://xtech.nikkei.com/atcl/learning/lecture/19/00054/00001/

DXの成功事例

次に、DXプロジェクトに成功した企業の事例を3つ紹介します。
①三井住友フィナンシャルグループ(以下SMBCグループ)

SMBCグループでは、個人のお客様向け店舗にてペーパーレス・印鑑レスを実現した「次世代型店舗」や、銀行サービスやクレジットカードの機能をスマホアプリで利用できる「三井住友銀行アプリ」、「三井住友カードVpassアプリ」を提供するなど、DXに力を入れています。
SMBCグループは、従来の普通預金のオンラインシステムという巨大なレガシーシステムを抱えていましたが、それをモダナイゼーションした上で更にDXを推進しています。
同グループがモダナイゼーション・DXに成功した大きなポイントは、経営層のコミットメントを得た点にあります。同社は小さい成功を積み重ねて”攻めのIT投資”を増やす、経営層にDXの重要性を説明するという方法で、経営層のプロジェクトへのコミットメントを得ることを実現しています。
(参考)https://www.nttdata.com/jp/ja/case/2020/100100/

②コニカミノルタ
コニカミノルタでは、欧州の需要予測業務にAIを活用することを決定しました。決定後、導入に向けてPoCを実施するに先立って同社が力をいれたのが経営幹部、グローバルの販売部門の合意形成です。システムの導入には多くのステーホルダーが関わる上に、AI導入には多くの費用がかかるため、その導入メリットや費用対効果に関して各ステークホルダーにしっかりと説明する必要があります。また、業務への適用の側面では現場スタッフとの連携も非常に重要であったということです。
(参考)https://wisdom.nec.com/ja/feature/manufacturing/2020090401/index.html

③トライグループ
「家庭教師のトライ」で知られるトライグループでは、基幹システムの刷新をアジャイルとマイクロサービスを採用して進めています。同社は初めウォーターフォール型でプロジェクトを進めましたが、、委託したITベンダーと上手く意思疎通ができずに頓挫してしまいました。初回の失敗を経て、同社は開発体制を見直し自社も積極的にプロジェクトに参加する姿勢に切り替え、再始動しました。

(参考)https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00678/090700034/

このようにDXプロジェクトでは、開発、テスト、導入の各フェーズで様々なステークホルダーとの合意形成、連携が成功の鍵を握っています。プロジェクトのリーダーであるプロジェクトマネージャーが率先してこれらのことを行うことは非常に重要です。

DX時代のプロジェクトマネジメントにおいて重要なこと

基幹系プロジェクトとDXプロジェクトの違いや企業の成功事例からDX時代にプロジェクトマネジメントではにおいて重要なことが分かります。

一つ目は、各ステークホルダーとの連携です。ユーザー企業内での部署間の連携や経営層の巻き込みは、意思決定のスピードを上げたり、システムを社内に浸透させるなど、社内での連携は円滑なプロジェクトの進行に欠かせません。更にそれだけではなく、ユーザー企業とベンダー企業の間での連携も非常に重要になります。家庭教師のトライグループの事例からも分かるようにユーザー企業も共にシステムを作り上げる姿勢を持つことがプロジェクト成功の鍵を握ります。

そして二つ目に重要なのは、スケジュールの流動性を踏まえてプロジェクトを管理することです。先にも述べたようにソリューションにAIを使用すると、システムの精度向上までに時間がかかったり、結果が出るまでの時間が読めなかったりすることがあります。このような中でもプロジェクトを進めていくためにも、プロジェクトリーダーを中心にこまめな進捗確認を行うなどの工夫をする必要があります。
このように、DX時代のプロジェクトマネジメントでは関係者が一丸となり、試行錯誤を繰り返してプロジェクトを進行していくことが求められます。

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