DX時代におけるAIのビジネス活用法
・AIは今までのテクノロジーと何が違うのか
これまでビジネスの現場においてもIT化が進み、今まで人が行っていた作業をテクノロジーを使って自動化する事例が増えています。
従来の自動システムは、「XならばY」という手順を人間が定義すると、休みも間違いもなくその命令に従って淡々と作業を実行してくれます。この時、自動システムを作るためには、全ての手順を人が定義する必要があります。
そんな中で、近年注目されているテクノロジーがAI(人工知能)です。人工知能は、インプットした情報の中から、自律的にパターンを探し、現象をモデル化し、それに基づいて状況への適切な対応を自ら選んで実行します。
それゆえ、従来の自動システムのように、全ての作業手順に関して人が指示を出すということをしなくてよい、あるいは人間が見つけられていないパターンについても対応できる可能性があります。
近年のAIの技術には、
・音声認識
・自然言語処理
・予測
などがあります。
・DX時代におけるAIのビジネス活用
これからのDX時代においては従来のように業務効率化などコスト削減のためにIT技術を活用するのではなく、IT 技術を使って新たな利益を生み出し、競争優位性を高めていくことが求められます。
ここでは、自律的にパターンを学習し、画像を理解したり言語を理解したりできるAIのDX時代におけるビジネス活用方法を4つほどご紹介します。
①検索エンジンでユーザー体験を向上させる
検索エンジンとは、ECサイト等でユーザーが探しているものをサイト内で素早く容易に見つけられるようにする機能です。直感的な関連結果を提供できるようになれば、顧客満足度の向上につながります。
②感情分析で顧客の意見を理解する
感情分析はテキスト本文に示されている感情や意見を評価するモノです。商品口コミやソーシャルメディアの投稿などは人間が読むには多すぎますが、AIを利用して感情分析システムを構築すれば、それらを素早く分析できます。
③自動モデレーション
InstagramやFacebookなど、ユーザー生成のコンテンツの公開をしているウェブサイトでは、センシティブな内容が含まれていないかどうかを検閲する必要があります。このようなコンテンツの監視は非常に手間がかかりますが、自動モデレーションに切り替えることで、作業量を軽減しつつ、一定の基準を保つことができます。
④テキスト要約
書籍の小売業者はテキスト要約を活用して顧客に本の概要を伝えています。音声の文字おこしのプログラムとテキスト要約のモデルを利用すれば、長時間の電話会議であったとしても、出席できなかった人が会議の重要事項をレポートで簡単に確認することができます。
・DX時代におけるAIのビジネス活用事例
ここでは、AIを活用したことによって新たな価値が生み出された事例をご紹介します。
株式会社ディー・エヌ・エータクシー配車アプリ「お客様検索ナビ」
従来なら、乗務員の経験から得られた知識やノウハウで行われていた、タクシーの走行ルートの提案にAIを活用した事例です。このサービスは、エリアごとにタクシーの需要供給予測をし、他のタクシーの供給量も加味しながら乗務員に対して最適な経路をレコメンド・ナビゲーションするシステムです。このサービスにより、乗務員は収益性の高いルートを知ることができ、収益の向上につながっています。
株式会社SBI証券
近年、デジタル技術を用いた様々な金融サービスが創出されている一方で、不正取引が複雑化・巧妙化しています。
従来は膨大な情報の中から、一定の基準に基づき不正の疑いのある取引を専門家が調査していましたが、人材不足や業務の俗人化等が問題になっています。
そこで、NECが開発したAIを導入することで、不正取引を高精度で検出できるようになりました。これにより、審査担当者の負担が減るだけではなく、顧客がより安全に取引をすることにもつながっています。
このようにDX時代においては、AIを使って単純に業務を効率化するだけではなく、そこから新たな価値を生み出すことが求められているのです。
DX時代における人工知能を活用した経営戦略
これまでDX時代におけるビジネスの現場でのAIの活用方法や事例についてお伝えしましたが、AI活用の可能性はビジネスの現場で業務を効率化したり、顧客の価値体験を向上するだけに留まりません。
Aiは、経営者が経営戦略、すなわち企業の持続的成長と生き残りのための方針・計画を立てる上でも大いに価値をもたらします。DX時代においては、経営戦略にもIT技術を組み込み、活用していくことが期待されます。
AIを活用することで経営戦略に欠かせない経営資源の配分を最適化することが可能になります。例えば、店内のレイアウトをどう変えたら、購入計画のなかったお客さんがどのくらい増えるのかといった予測モデルを活用した例などがあります。
また、問合せ数とオペレーターの処理時間からコールセンターの人数配分の最適解を導いたり、広告の効果を最大化させるための広告予算の最適配分を導き出すという事例もみられます。
このように、経営資源の配分、出店計画や資金運用計画などの経営戦略を実施するにあたり、AIを活用することで企業内に蓄積された様々なデータを組み合わせて、そこからシミュレーションや仮説を立てることができます。
人ではなくAIが大量で複雑なデータを基にシミュレーションを作成するので、より迅速な対応・意思決定をすることができます。
以上のようにAIは経営戦略を立てる上で非常に有益かつ有効な予測や仮説を提供することができます。
しかし、最終的な意思決定をし、それを基に組織を動かしていくには経営者の手腕が問われます。また、AIを社内で上手く活用していくことそのものも経営戦略に当たるので、まずは経営者自身がどのようなデータ、技術が使えるのかということを理解しておくことは非常に重要です。
参考:https://www.recruit-ex.co.jp/report/20190604_1.html
AIを導入する上での課題
上記で述べたように、DX時代においてAI活用は企業の持続的成長、また新たな価値の創出のために非常に重要です。
しかし、現状日本企業ではAIの導入があまり進んでいません。
リサーチ企業であるMM総研が調査した結果によると、日本企業でAI技術を「導入済み」の企業は1.8%、「導入検討中」は17.9%だそうです。一方で、米国は「導入済み」の企業は13.3%、「導入検討中」32.9%であり、ドイツはそれぞれ、4.9%、22.4%でした。
ここから、実際にAI活用が上手くいくと大きなメリットがある一方でAI活用に至るまでに課題があることが分かります。以下、日本企業におけるAI導入上での課題を紹介します。
①AI導入の環境整備
ビジネスでAIを活用するに当たって重要なのが、自社に最適なアルゴリズムを組むことです。そのためには、目的にあった最適なデータ収集が必要不可欠です。この時、既に所有しているデータを活用するという観点だけでなく、目的や問題解決のために必要なデータは何かを明確にして、収集する必要があります。
また、セキュリティコンプライアンスに関して社内で厳しい規制が存在しており、部門をまたぐデータの収集・活用が容易ではないケースも見受けられます。これに関しては、経営陣や現場にデータに基づく判断を浸透させ、自社内で横断的なデータ利活用が推進されるように、システムやセキュリティに関して社内規定・制度の見直しも必要になります。
②経営陣の知識と理解不足
経営戦略の立案・実施や現場においてAIを活用するにあって重要なのは、経営者のAIに対する知識や理解です。AIでは何が出来るのか、AIを導入するためではどのようなデータが必要で、どのようなデータが不足しているのかなどに対する理解を経営者が持っていなくては、先に述べた既定の見直しやIT投資、システムの見直しなど、AI導入に当たって全社的に取り組むべきことが実行されません。
現状、会社によっては経営層から「AIを使って何かできないか」という曖昧な指示がIT部門や現場に飛ぶこともまだあり、経営陣の知識不足や理解不足からAI導入が進まないというケースが少なくありません。
③導入後の運用シーンの検討
AI導入において、見逃されがちなのが導入後の運用管理です。AIの特性上、せっかく本番環境でAI導入に成功しても、再学習を繰り返さなくては精度が落ちてしまい、実用で不備が生じてしまう可能性があります。
運用のための社内リソース、システム、ノウハウの不足はAI導入の課題となります。
参考:https://artificial-intelligence.ne.jp/547/
参考:https://www.sbbit.jp/article/cont1/37786
参考:ttps://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/10145.pdf
参考:https://ledge.ai/microsoft-automl/
AIを導入する上での課題の解決策とは?
このようにAI活用のメリットを享受するためには、そこにおける課題を乗り越え、AIを社内に導入し、運用管理までこなす必要があります。これらを踏まえてAIを活用するためには、「事業を成長させるうえで必要な知識」と「機械学習で実現できることに対する知識」の両方を合わせもつDX人材を増やすことが重要であると考えられます。
自社の事業でAIを活かすにはどのようなアルゴリズムが必要か、どのようなデータを収集する必要があるのか、運用管理のために不足しているリソースは何かなどを見極めることができ、引っ張ってくれるようなDX人材を中心にAI導入を進めていくことで、課題やリスクを把握しつつ上手く活用することができます。
参考:https://artificial-intelligence.ne.jp/547/
参考:https://ledge.ai/microsoft-automl/
【監修者】編集長
プライムDXブログ編集部の編集長。現在はプライムスタイル株式会社新規事業、マーケティング担当も兼務。皆様にとって役立つ情報提供を心掛けて参りたいと思います。